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ルック・オブ・サイレンス(2014年/デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス/103分)

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監督 ジョシュア・オッペンハイマー
出演 アディ・ルクン アミール・シアハーン アミール・ハサン 他


ベースメント指数 ★★★★☆/4.18
客観指数 ★★★★☆/4.05
(amazon-4.8/5、IMDb-8.4/10、ROTTEN TOMATOES-8.8/10、TSUTAYA DISCAS-3.09/5、YAHOO映画-3.78/5)
属性 ドキュメンタリー 
<『ゆきゆきて神軍』以来の客観指数4点台。ただamazonのレビュー数が4つと少ないのがデータとして微妙>


アクト・オブ・キリング姉妹版。

1960年代、インドネシアで軍指揮下における(実際手を下したのはチンピラ)大量虐殺が行われ、その加害者がその再現映画を撮る、という体のドキュメンタリーが『アクト・オブ・キリング』でした。2012年、『アクト・オブ・キリング』の編集を終え公開を控えた時期に撮影されたのが本作『ルック・オブ・サイレンス』。
本作の主役は生まれる前に兄を虐殺で失っている中年アディ。彼は、父親が当時の恐怖を引きずりおかしくなってしまった姿を見て、かつジョシュア監督が加害者と対峙する姿を見て、「自分も加害者と対峙することで恐怖の関係性から解放されるかもしれない」との理由からジョシュアにこの企画を提案します。

僕は観ながら「この監督は『ゆきゆきて、神軍』を撮りたいんだろうなあ…」などと考えていたのですが、鑑賞後、監督のインタビューを見ると全く違うようでした。正直、撮影後アディとその家族は無事なのだろうか、とか、こんな危ない映画を撮るなんてアディやその家族にとってはマイナスしかないのではないか?とすら感じていたのですが、本人が希望したんですね。ジョシュア監督はむしろ止めたらしいです。謝罪など引き出せないだろうし、脅されるかもしれないと。

『ゆきゆきて、神軍』との共通点

被害者遺族が加害者を訪問する、という点がまず同じです。そして、被害者遺族に対し加害者が取る態度、これもまた全く一緒でした。ただ、「私は関係ない」と嘘をついた元日本兵と、さも趣味の話でもするかのトーンで虐殺の詳細を語る本作の加害者とではやはり隔たりがあるのかな、とも感じました。
本作の感想として「誰だってこの状況では悪に陥る可能性がある」などというモノを複数見ましたが、そりゃそうかもしれませんが、ちょっと次元が違うと思いませんか?どんな精神状態なら生きてる人間をナイフで腸が飛び出るまで刺した後川に突き落とし、まだ生きてるからと今度はペニスを切り落としてからとどめを刺す、などという行為が出来るのか。そしてそれを自慢気に他人に話すことが出来るのか。いや、明らかにレベルが違うでしょうと。本作における加害者達が元々どんな職につき、どんな生活を送っていたのかは語られませんが、軍人というよりはヤクザとかマフィアの精神性に近く感じます。なので「一般人による虐殺及び残虐性」というよりは、もっと別の尺度で語られるべきなのかもしれません。そう考えると、「体制/権力側にいるヤクザ/マフィア」への過去の追求とも言うべきインタビューを敢行した、まごうことなき一般人アディ氏は凄いですね。絶対関わりたくない、というのが普通の感覚でしょう。

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虐殺の指揮をとった男にこの表情のアディ氏。

責任転嫁と言い逃れ(エキスキューズ)

『ゆきゆきて、神軍』では、日本兵が部下を銃殺したという事件があり、その真相を追求していきます。加害者達は最初口々に「自分は関係ない」「そこにはいなかった」などとウソをつきますが、遺族と同行していた奥崎の暴力もあり最終的には関与していたことを認めます。しかし「上に命令された」「配られた銃の中には弾の入ってないモノも含まれていた。自分は空砲の銃だったから被害者を撃ってはいない(部下銃殺事件は処刑という形で複数人による発砲で行われた)」などあらゆる言い逃れを用意していました。「空砲の銃を混ぜる」というのは、もはや「それを言い逃れに、心の逃げ道にしなさい。そして、撃て」ということですよね。逆に言えば、そういった責任転嫁や言い逃れナシにはそうそう人は人を殺せないのではないか、とも感じます。
本作の加害者たちも、まず軍の指示の元、しかも「共産主義者は悪人である」と吹聴された上で虐殺を行っています。言い方を変えれば、「国のために」「悪い人間を始末した」という言い逃れを与えられた上で殺している訳です。
しかしアディのインタビューで、その言い逃れはボロボロ剥がれ落ちていきます。すると「私に責任はない」「もう撮影は止めろ」「お前の家を教えろ」「これ以上ぶり返すとまた同じこと(虐殺)が起こるぞ」などとそれぞれの立場から拒絶反応を示します。
コレをしかしアディは彼等が罪悪感を持っている証と捉えます(多少推察入ってますが)。自慢げに振舞うのも、罪悪感故に演じているのだと。

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本作では、罪を認める加害者はほぼいません。その家族の中にはアディに謝罪する人もいて、そこが救いでもありました。しかしながら、もし罪を認めたら『アクト・オブ・キリング』のアンワルのようになってしまうのでしょうか。また、同じような社会情勢、状況下におかれたとして彼等のような残酷な手口で虐殺を行える人間が現代の日本にどれだけいるでしょうか。軍人が戦争で人を殺す、という心理状態は少なからず想像出来ますが、一般人が一般人を大量虐殺するというのは…。
正直「自分の中の悪」と照らし合わすには次元が違う気がしました。だからといってそこまで衝撃的でも無かったです(大分免疫が出来たのかな)。前作のアンワルの方がインパクトありました。彼のその後の方が興味ありますね。

アディの息子が通う小学校にて、教師が「共産主義者は残酷。共産主義者の息子や孫は公的機関に就職できないが当然ですよね。」という風に教えてましたが、『アクト・オブ・キリング』公開後、教育方針も見直されてるとか。しかし歴史問題は面倒ですね。近い将来当事者たちはいなくなり、いくらでも改ざん可能な「記録」を頼りに真実を追求出来るものなのか。そういう意味でも加害者たちを記録した本作及び前作の与える影響は計り知れませんね。




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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : ドキュメンタリー

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